社内PCの入れ替えやリース返却の際に、特に注意が必要なのが、マイナンバー(特定個人情報)を扱った端末のデータ消去です。マイナンバーは、給与や社会保険などの手続きのために、企業が従業員などから取得し、PCに保存される場合があります。この記事では、法人の情報システム部門や総務部門の担当者に向けて、マイナンバー端末に求められる消去の基準、HDDとSSDの違い、消去の記録の管理を解説します。
個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」では、マイナンバーが記録された機器や電子媒体を廃棄、返却する際に、「復元不可能な手段によるデータ消去」と「消去したことの記録(証跡)の保存」を求めています。マイナンバーを取り扱う事業者には、必要がなくなった個人番号を、できるだけ速やかに廃棄または削除することが求められており、PCの入れ替えやリース返却は、この対応が問われる場面の一つです。OSの初期化だけでは、データ本体が残る場合があるため、専用の消去ソフトウェアの利用や、物理的な破壊といった手段で、消去を行います。消去を行ったあとは、その事実を記録して保存しておく必要があり、これは企業の監査や、個人情報保護委員会などへの説明の際にも、重要な資料になります。
参照元:個人情報保護委員会(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/)
データ消去の方法は、米国の国立標準技術研究所(NIST)が公表する「NIST SP800-88」で、Clear、Purge、Destroyの3段階に整理されています。2014年のRev.1は、2025年9月公表のRev.2に改訂されましたが、3段階の考え方は引き継がれています。次の表は、各レベルの概要と、マイナンバーを扱う端末への適用の目安です。
| 消去レベル | 概要 | 主な手法 | マイナンバー端末への適用 |
|---|---|---|---|
| Clear(クリア) | 一般的な復元ツールによる解析を防ぐ論理的消去 | 固定値の上書き(ゼロ上書き等) | 社内再利用(非重要情報)向け |
| Purge(パージ) | 研究室レベルの技術を用いても復元が困難な消去 | セキュアイレース、暗号化消去(Cryptographic Erase) | 推奨(社外放出・リース返却時) |
| Destroy(デストロイ) | 物理破壊により再利用不可能な状態にする | 穿孔、裁断、物理的破砕、溶融 | 機密性の高い情報・故障端末の廃棄 |
参照元:【pdf】NIST SP800-88 Rev.1(日本語訳)│IPA 独立行政法人 情報処理推進機構(https://www.ipa.go.jp/security/crypto/gmcbt80000005u4j-att/SP800-88rev1.pdf)
マイナンバーなどの厳格な管理が求められる情報を含む端末を、社外へ処分、返却する場合は、Purgeレベル以上の消去を、社内の基準として定める運用が考えられます。NIST SP800-88は、媒体に記録された情報の機密性に応じて、消去の方法を選ぶ考え方を示しており、特定の情報に必須のレベルを一律に定めているわけではありません。そのため、自社の消去基準には、マイナンバーを取り扱う端末の区分と、社外へ放出する場合に採用する消去レベルを、明記しておく必要があります。
PCのリプレイスでは、搭載されている記憶媒体が、HDDかSSDかによって、適した消去の方法が異なります。従来のHDD(ハードディスク)では、全領域への上書き消去が有効でしたが、近年主流のSSD(フラッシュストレージ)は、構造が異なります。SSDには、ウェアレベリング(書き込み分散機能)などの内部処理があるため、通常のソフトウェアによる上書き消去では、アクセスできない領域にマイナンバーのデータが残存するリスクがあります。
SSDを安全に消去するには、ストレージコントローラーに対して、内部のすべてのセルを消去させるコマンドを実行する方法があります。SATA接続のSSDでは、Enhanced Security Eraseなどのコマンドが該当し、NVMe接続のSSDでは、フォーマットやサニタイズなど、別のコマンドが用いられます。もう一つの方法が、暗号化鍵を破棄して、データを解読できない状態にする「暗号化消去(Cryptographic Erase)」で、これらに対応した専用の消去ツールが必要です。なお、暗号化消去は、記憶媒体にあらかじめ暗号化の機能が備わっている場合に使える方法のため、PCの機種や設定によって、対応の可否が異なります。
データ消去は、作業を行うだけではなく、「正しく消去した」ことを、第三者に説明できる体制を整えておく必要があります。データ消去の実施時には、次の項目が含まれた「媒体消去証明書」を発行し、保存します。消去の記録は、マイナンバーを取り扱う事業者が、ガイドラインに沿った管理を行っていることを示す資料であり、監査や、社内外からの照会の際に、消去の事実を確認できる根拠になります。処分や返却を外部の事業者に委託する場合も、消去が行われたことを、証明書で確認する運用が有効です。
PCの入れ替えに伴う、大量のマイナンバー端末の消去には、安全性の確保と、作業効率の両立が重要です。ガイドラインが求める、復元不可能な手段による消去と、記録の保存に対応するには、NIST SP800-88のClear、Purge、Destroyを踏まえて、社内の消去基準を定める必要があります。特にSSDは、通常の上書き消去では不十分な場合があるため、専用コマンドや暗号化消去に対応したツールが求められます。消去の基準、媒体に応じた手法、消去証明書による証跡の3点を揃えて、運用を標準化することで、台数が多い場合にも、対応の漏れを抑えやすくなります。
※2022/4時点公式HPより
2022年4月時点で「データ消去」で検索して公式サイトが表示される上位35社をピックアップ。 消去証明書の発行または第三者機関の認定があるデータ消去サービス・販売企業の中から以下の基準で選定
アドバンスデザイン:全ての消去方法に対応。データ復旧会社の消去サービスを提供
ブランコ・ジャパン:消去したデバイス数が最多2.5億台以上(2022年6月公式HPより)
日東造機:物理破壊装置の業界シェアNo1(※)参照元:日東造機(http://nittoh.co.jp/db50pro.html)2022年6月時点
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| アドバンスデザイン | ブランコ ジャパン |
⽇東造機 | ||
|---|---|---|---|---|
| 販売 | データ消去ソフト | 〇 | 〇 | - |
| 磁気データ消去装置 | 〇 | - | - | |
| 物理破壊装置 | 〇 | - | 〇 | |
| データ消去サービス | オンサイト対応 | 〇 | 〇 | - |
| オフサイト対応 | 〇 | - | - | |
| レンタル | データ消去機器レンタル | 〇 | - | - |
| 公式サイト | ||||