物理破壊とは、その名の通りHDDを物理的に破壊する方法です。HDDの記憶領域に穴をあけたり、専用のシュレッダーで裁断するといった方法があります。ここでは、物理破壊のメリット・デメリットについて詳しくまとめてみました。
まずは「物理破壊」とはどのようなものなのか、概要を解説します。
HDDからデータを消去する方法としては、大きく分けて「物理破壊」、「論理破壊」、「磁気消去」が存在します。
論理破壊とはHDDの機能は温存し、データのみを消去する方式です。ユーザーによるファイルの削除もこれに該当しますし、専用のデータ消去ソフトによる領域の上書き消去もこれに当たります。
磁気消去は強力な磁気によってデータを一瞬で上書きする方法。処理が高速なのが特徴です。
一方、この記事のテーマである「物理破壊」は、HDDの機能そのものを破壊するのが特徴です。HDDとして機能しなくなればパソコンにつないでもデータを読み取ることができず、確実にデータを消去できます。
HDDの物理破壊方法としてよく使われるのが「穿孔破壊」と呼ばれる方法です。
これは専用の破壊装置を用いてHDDの内部に格納されている記録面(プラッター)を破損させるというもの。さらに記録面を加圧変形させることもあります。
上書き消去はデータ消去ソフトを利用するなどして記録媒体に書き込まれたデータを消去する手法です。この手法ではパソコンを分解する必要はないですが、パソコンの本体や記録媒体が破損している場合は消去の操作をすることができません。
磁気消去は消磁装置と呼ばれる機械でHDDに強い磁気をかけ、保存されているデータの磁気読み取りを不可能にする手法です。HDDの取り出しのためにパソコンを分解する必要はありますが、本体やHDDが故障していても作業することが可能です。
データ消去のために物理的な破壊をする方法は分かりやすく有名ですが、通常の工具や一般人の技術ではHDDユニットを完全に破壊することは困難です。さらに自力で破壊すると可燃性金属から発火したりガラス破片が飛び散ったりと危険もありますし、そもそも物理破壊をするためには記憶媒体を取り出す必要もあります。また、物理的に破壊したとしても特殊な技術を駆使することで破片からデータを再生することが可能性な場合もあり、リスクを完全に無くすことは非常に難しいです。完全にデータを削除し復旧できないようにするためにはシュレッダーやクラッシャーで粉々に粉砕破壊したり、物理破壊とその他の消去方法を組み合わせるなどする必要があるでしょう。
HDDを物理破壊するメリットを解説します。
物理破壊最大のメリットは、確実にデータを消去できるという点です。
HDDとしての機能が失われる以上、そこからデータを取り出すことは難しく、漏洩すると危険なデータの消去にうってつけです。
論理破壊の場合、データを消去したといわれても人間の目では本当に削除されたのかどうかを確認できません。
物理破壊の場合、特に穿孔破壊の場合はHDDに穴が空いたり記録面が曲がっていたりするため、一目で破壊されたことを確認できます。
データ消去の記録をつける際も写真1つで証拠となるので記録がつけやすいです。
物理破壊はシンプルな方法で処理をおこなうため、短時間で破壊処理がおこなえます。
大量のHDDがあったとしてもスピーディーに作業を終えられるでしょう。
物理破壊にはデメリットもあります。デメリットを理解した上で用いるようにしてください。
物理破壊はHDDの機能そのものを破壊するため、破壊したHDDは2度とHDDとして利用できません。
このため、ほかの目的に転用するのであれば別の方法をとる必要があります。
物理破壊されたHDDはもはやHDDとしては使えず、ただの廃棄物になってしまいます。
特に数多くのHDDを物理破壊した場合、その処分方法も検討した上で実行するようにしてください。
HDDの物理破壊は適当に壊せばよいわけではなく、データが2度と読み出せないようピンポイントで位置を特定して破壊しなくてはなりません。
専用のHDD物理破壊装置を使えば誰でも簡単に物理破壊できますが、装置そのものが高額なのが難点です。
自分で物理破壊をおこなう方法については後述します。
一言でデータ消去といっても、対応しているメディア、消去方法など多岐にわたります。
データ消去において、トラブルを未然に防ぐためにも、
信頼できる業者に依頼をすることが重要です。
おすすめのデータ消去業者3社を紹介しているので、是非参考にしてください。
専用の物理破壊装置を購入したり業者に依頼したりするコストを抑えたいのでしたら、自分で物理破壊することもできます。
4種類のおすすめの破壊方法と、2種類のおすすめできない破壊方法を紹介しますので、やりやすい方法を選んでみてください。
1つ目の方法は、本体の隙間から内部を破損させるという方法です。
HDDの側面あるいは裏面にある銀色のシールを剥がすと、内部にアクセスできる穴が現れます。
この穴にドライバーなどを入れ、記録面を破損させましょう。
隙間からの破壊だけでは不安という方には、分解がおすすめです。
やり方はシンプルで、HDDのネジを外して中身を取り出すだけです。HDDは精密機械ですので、ホコリやゴミが記録面についただけで読み出せなくなります。
さらに記録面に穴を開けたり、記録面を曲げたりすると確実です。
HDDは精密機械ですので、ハンマーなどの鈍器でたたいてへこませてしまえば動作しなくなります。
この方法の場合、記録面ではなくチップや基板を破損させることによって破壊しているため、記録面自体も破壊したいのでしたら別の方法と組み合わせるとよいでしょう。
記録面自体を破壊するならドリルで穴を開けましょう。
HDDの裏側を見ると、どこに記録面があるかわかります。
中心から少し離れたところに数カ所穴を開けてください。
なお、記録面は何枚か重なって存在しているため、ドリルを貫通させるのが確実です。
HDDは非常に硬いため、ドリルの破損に気をつけながら作業をおこないましょう。
電子機器は水につけると壊れると思われがちですが、濡れたHDDを復旧させた事例があります。
このため、水につけて終わりという破壊方法は確実ではなくおすすめできません。
電子レンジで加熱する方法もおすすめできません。
この方法はデータやチップ、基板を電磁波で破壊することを狙っているのですが、電子レンジ程度の出力では確実ではなく、ほかの方法をとったほうがよいでしょう。
先述の通り、物理破壊したHDDはもはや廃棄物であり、適切に破棄する必要があります。
業者に依頼した場合は一般的に業者が破棄してくれますが、自分で破壊した場合は不燃ゴミとして自分で破棄するようにしましょう。
また、自治体によっては「使用済小型家電回収ボックス」を設置していることがあります。ルールをよく確認した上で利用してください。
パソコンやHDDに内に、個人情報・顧客情報・納税記録・社内文書・パスワードといったデータがひとつもないと言い切れない場合は、確実にデータを消去できる物理破壊が適しているでしょう。
故障していてパソコンやHDDが起動しないといったケースにも問題なく対応できますし、OSや記憶媒体の種類(テープ・ディスクなど)も問いません。また、比較的短時間で作業ができるため、大量のHDDを一括処分したいという場合にも向いています。
※2022/4時点公式HPより
2022年4月時点で「データ消去」で検索して公式サイトが表示される上位35社をピックアップ。 消去証明書の発行または第三者機関の認定があるデータ消去サービス・販売企業の中から以下の基準で選定
アドバンスデザイン:全ての消去方法に対応。データ復旧会社の消去サービスを提供
ブランコ・ジャパン:消去したデバイス数が最多2.5億台以上(2022年6月公式HPより)
日東造機:物理破壊装置の業界シェアNo1(※)参照元:日東造機(http://nittoh.co.jp/db50pro.html)2022年6月時点
▼スクロールできます▼