令和元年度以降、小中学校での1人1台端末の整備やクラウドサービスの本格活用が進み、教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインも時代とともに改訂を行ってきました。
文部科学省では新たに「暗号化消去」という用語を追加。この手法は、記録媒体を含む情報機器を廃棄する際や、リースの返却をするときにデータを復元できなくするものです。
この記事では暗号化消去の概要について解説します。暗号化消去のメリットやデメリット、懸念点について、また他の消去法との比較についても言及します。
暗号化消去は英語でCryptographic Erase(CE)とも呼ばれます。サーバーなどに暗号化して保存したデータが不要になったとき、該当するデータを削除すると同時に暗号化に使った鍵を削除することで、データにアクセスできなくする削除方法です。
一般的に暗号化はデータを保護するために使いますが、鍵をなくすとそのデータは復号できなくなります。この仕組みを逆手に取ったものが暗号化消去であり、鍵を削除することで実質的にデータ閲覧を不可能にします。
従来はソフトウエアによる上書き消去や物理的な破壊による消去を行っていましたが、暗号化消去により短時間で媒体の再利用ができるようになりました。
小中学校ではタブレット端末を1人1台配布していますが、卒業時などには端末を返却させます。従来のように端末の物理的破壊では端末の再利用ができずコストがかかりすぎてしまいます。
また上書き消去では、端末の容量が大きいために膨大な時間が必要となり、全生徒分を上書きするとなると大変な時間と労力がかかります。
その点、暗号化消去は鍵を削除するだけでデータ消去ができ、数秒で終了します。また端末の一部領域のみのデータを抹消することも可能です。
大量の端末からデータ消去する必要がある場合には、暗号化消去はメリットが大きいといえるでしょう。
暗号化するためのアルゴリズムが脆弱だと、削除したはずのデータが復号される可能性があります。暗号化する際には、強力な暗号化アルゴリズムを選択する必要があります。使用しているアルゴリズムの脆弱性については、日々変化しているため定期的な確認をすることが推奨されます。
またデータ暗号化に使用する鍵が漏洩してしまうと、データが復元されてしまいます。暗号化消去を行うときには、鍵のバックアップが確実に存在しないことを確認しましょう。
現在のところ暗号化キーが完全に破壊されていれば、データを復元することはかなり難しいです。だからといってアルゴリズムが脆弱であればリスクが大きいため注意してください。
また、将来は技術が発展して暗号化しても破られることがあるかもしれません。常に現時点における十分に強力な暗号化アルゴリズムを使用しておくと良いでしょう。
一般的なデータ消去の方法には、物理破壊・磁気消去・上書き消去があります。
物理破壊は記録媒体にドリルで穴を開けたりし、物理的にデータが読めない状態にすることです。ただし実際に穴を開けた記録媒体が動作した事例もあり、確実な消去方法ではないこともあります。また記録媒体自体も再利用できず、環境負荷も大きい方法です。
磁気消去は、専用の装置を使ってハードディスクドライブに強力な磁気照射をしてデータを消去する方法です。データ消去はできますが、ハードディスクドライブ自体も使用不可となります。データ記録に磁気を使っていない場合には、磁気消去はできないので注意が必要です。
上書き消去はデータの上に意味のないデータを上書きすることでデータを復元できないようにします。専用のソフトウェアを使って上書き消去を行えば、HDDは再利用できます。パソコンやHDDをリースしていて返却する場合によく利用される方法です。
これらの消去方法と暗号化消去を比較してみると、暗号化消去は削除に数秒程度しかかからないため、ストレージの容量が大きい場合に適しています。また記録媒体を再利用したい場合にも、暗号化消去であれば問題ありません。
暗号化消去は、鍵を抹消してしまえば数秒でデータの復号が不可能になるデータ消去の方法です。令和元年度から小中学校では1人1台のタブレットを配布しての教育を実施しており、卒業時には学校へ返却することになっています。
端末は次の生徒に再利用するため、データを消去する必要がありますが、物理破壊や磁気消去は端末の再利用ができません。また大量の端末から大きなデータを削除するには、時間がかかりすぎる上書き消去も不向きです。
暗号化消去は、短時間で消去ができ記録媒体の再利用が可能というメリットがありますが、暗号化アルゴリズムが脆弱だとデータを復元されてしまうリスクがあります。
データ消去は、より厳格なセキュリティ基準を満たすデータ消去業者に依頼する方法もあるので、業者の選択も含めて検討してみましょう。
※2022/4時点公式HPより
2022年4月時点で「データ消去」で検索して公式サイトが表示される上位35社をピックアップ。 消去証明書の発行または第三者機関の認定があるデータ消去サービス・販売企業の中から以下の基準で選定
アドバンスデザイン:全ての消去方法に対応。データ復旧会社の消去サービスを提供
ブランコ・ジャパン:消去したデバイス数が最多2.5億台以上(2022年6月公式HPより)
日東造機:物理破壊装置の業界シェアNo1(※)参照元:日東造機(http://nittoh.co.jp/db50pro.html)2022年6月時点
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